2019年8月7日 – 18日
かつて錬金術においては、性質の異なる物を結びつけることを「太陽と月の結婚」という寓話によって説明した。このモチーフは、熊倉涼子の絵画にとって、重要な対象のひとつであるだけでなく、彼女の方法それ自体の寓意(アレゴリー)でもある。今日では擬似科学とみなされる錬金術だが、その探求の蓄積なしには近代科学の発展もありえなかった。熊倉は、こうした人類の歴史のなかで生み出されては忘れ去られていく古今東西のイメージを、図録やインターネットなどから蒐集し、再構成する。その画面は、時代の変遷とともに失われていった世界観の模型であるだけでなく、新しいイメージの胚胎する場処でもある。
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安井 海洋(美術批評)
「科学知への意志――熊倉涼子「coniunctio」における表象の布置」収録