西原彩香 個展「白河夜船」(うららか絵画祭)

 

2023年 1月31日 – 2月19日

HAGISOうららか絵画祭)⧉

 

 

たとえば家の窓から外の風景を眺めるとき、透明なガラスの存在は認識されにくいかもしれませんが、磨りガラス越しに見るとき、光の透過に還元されたイメージは──普段は忘れられている──その媒体性に私たちの意識を向けさせます。展覧会タイトルの「白河夜船」は、知ったかぶりを意味する諺でもありますが、ぐっすり眠り込んで何が起こったか知らないことのたとえでもあります。コロナ禍における外出自粛の期間中、スマートフォンやパソコンの画面を眺めるほかにできることもなく、その日をやり過ごすので精一杯だった日々のことを連想すれば、それを通して家の中から外の世界を見ていた「窓」というのも比喩的に響くはずです。

「窓」の向こうに目を凝らしていると、あるとき腰痛や眼精疲労を感じたりして、否応なく自分の身体という存在が思い出されることもあります。あるいは iPhone の画面が汚れたり割れたりしたときも、それを通して見ている媒質の存在に気づきます。外の景色に没頭しているあいだは、その「重さ」を忘れられて「透明」だった「支持体」が、ふと「半透明」なものとして立ち上がってくるときこそ、「見る」こと、ひいては「描く」ことの条件について再考する契機です。

西原彩香の絵画は、画像という「透明」なイメージのありかたを志向しながら、それ自体、絵具や画布、木枠などで構成された物質的なタブローでもあるという存在です。光の網目のような、その「半透明」な「窓」は、各々どんな場所を想起させるでしょうか。まだ「家」の中にいるのだとしたら、その大きさや規格に無頓着ではいられません。私たちの生きる日々を肯定するために必要なのは、私たちの居住空間──あるいは「インテリア」──に適う絵画のありかたなのかもしれません。

 

curation-2023-02a-1
curation-2023-02a-1curation-2023-02a-2
curation-2023-02a-3
curation-2023-02a-4
curation-2023-02a-5
curation-2023-02a-6
curation-2023-02a-7
curation-2023-02a-8
curation-2023-02a-9
curation-2023-02a-10
curation-2023-02a-11
curation-2023-02a-12
curation-2023-02a-13
curation-2023-02a-14
curation-2023-02a-15
curation-2023-02a-16
curation-2023-02a-17
curation-2023-02a-18
curation-2023-02a-19
curation-2023-02a-20
curation-2023-02a-21
curation-2023-02a-22
curation-2023-02a-23
curation-2023-02a-24
curation-2023-02a-25
previous arrow
next arrow