亜鶴は、社会とのかかわりにおける自己の再形成をテーマに、ポートレートをつくり続けている。なぜ顔を描くのかと問うならば、もとは仮面を意味したペルソナという言葉が人格という意味をもつに至ったように、顔面は、その人の「役柄」を象徴するものだからであると言える。しかし、亜鶴が描くのは、特定の誰かの顔ではない。誰の顔でもないということは、誰の顔でもありうる。中心化された顔とのバランスを調整しながら、周囲に様々な「絵柄」を描き加えていく過程は、他者との関係において “私” を規定していくプロセスに準えることができる。亜鶴の絵画と対峙することは、自分自身と向き合うことに他ならない。
亜鶴 個展「Pachydermata」
2019年11月4日(月/祝)-13日(水) ※会期中無休
11:00-19:00(最終日は17:00まで)
https://medelgalleryshu.com/pachydermata/
人間は皮膚という境界によって絶望的に世界から切り離されていると思う。それは環境との接触面であり、個人に与えられた安全な輪郭でもあるが、それゆえに他者から自己を限定し、外界との交渉を制限しているようにも感じる。厚皮類(Pachydermata)――古い分類学で、ゾウやサイ、カバといった厚い皮膚をもつ動物を包括する概念は、体毛が少なく、その表面に網目状の模様をもつという、私たち人間の皮膚と似た特徴をも内包していた。この言葉は、生物学的な形質における類似性の謂いというよりも、ある意味、あまりにも「厚い」皮膚によって閉ざされた人間のありかたを象徴するように思われる。
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