熊倉涼子 個展「PICTOMANCY」

 

2016年 8月27日 – 9月10日

RED AND BLUE GALLERY

協力:TAV GALLERY

 

展覧会パンフレット


「イメージの存在――熊倉涼子の静物画」
収録

☞ Writing(http://ngmrsk.jp/writing/2016-08w



トークイベント

2016年9月3日 ゲスト:林 道郎 氏(上智大学 国際教養学部 教授)


熊倉凉子 個展「Pseudomer」パンフレット(RED AND BLUE GALLERY、2018年8月)に収録

☞ Talk(http://ngmrsk.jp/talk/2016-09

 

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 熊倉涼子は一貫して〈ぬいぐるみ〉をモチーフに絵画を制作している。

 初期作品では「だまし絵」に類する手法を採り、それらを写実的に描くことで、対象を筆致に置き換え、イメージに変化させる絵画の営みと、私たちの想像――あるいは妄想――を喚起する装置である〈ぬいぐるみ〉の本性とを結びつけた。戯曲や童話を「背景」に用いたり、春画やプリクラの構図をとり入れたりすることで、鑑賞者によって恣意的な物語が代入される〈ぬいぐるみ〉という形象の寛容さを中心化し、他者のまなざしについて批判的な制作を行っていたのである。

 しかし、ひとつの技術的な絶頂は、テクスチャに腐心することから彼女を醒めさせた。どの形象もキャンバスの上では均質であるという、ある種、還元主義的な自覚によって、熊倉は「静物画」の系譜を批判的に継承するに至る。〈ぬいぐるみ〉とは、さまざまな形式によって捨象された、ほかならぬイメージである。「画中画」に類する巧智によって、モチーフとしてのイメージを二重化し、まったく質的に損なうことなく再現前することを可能にした。

 熊倉は、もはや対象の把握に関する造形的な方法論に拘泥しない。絵画における「イリュージョン」の範疇は、単なる絵画鑑賞における錯覚的な効果にとどまらず、絵画そのもの――描かれたもの――の実在性を存在論的な審級において保障することにかかわっているのである。

 

2016年8月

 

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